ロシア劣勢で中共が台湾侵攻を見直すという説はバカな楽観論でしかない

ロシアがウクライナに侵略戦争を仕掛けてからすでに2ヶ月半弱。日本ではウクライナ側の奮闘とロシア軍のグダグダぶりが報じられ、もはやロシアの勝利はありえないように思えます。

ロシアの劣勢が伝えられるようになってから、日本ではこれを教訓に習近平が台湾侵攻を見直すのではないかという意見が出始めました。内容的には、これで中国も台湾侵攻をあきらめるに違いないというものから、侵攻をするにしても戦略を再構築するだろうというものまで様々です。まあ日本語はあやふやな言語なので一口に「見直す」といってもその振れ幅は大きいです。

ただ、中共が台湾侵攻をあきらめる、もしくはしばらくの間は控えるというのは、現状を知らない楽観論でしかないと言えます。

昨日5月8日、中国の軍用機2機が台湾の防空識別圏に侵入しました。1機はY-8輸送機、もう1機は卡-28対潜哨戒ヘリコプターです。中国の軍用機による防空識別圏への侵入はこれで4日連続。5月に入ってから中国の軍用機が防空識別圏へ侵入したのは6日間に及びます。

台湾の国防部によれば、2022年になってからの中国軍機の防空識別圏侵入があったのは5月8日時点で84日。これだけ見ても、中共がウクライナ情勢に関わりなく台湾への威嚇を自重していないことがわかります。

また、国民党を通じた政権への揺さぶりは絶え間なく行われています。フェイクニュースまで使って行われる国民党による政府批判は、多くの台湾国民からは失笑を買っているものの、国民党がなりふり構わなくなってきているのは、それだけ中国の影響力が強くなっているからではないかと思われます。

中国はアメリカと戦争をする気はないし、やれば負けるとわかっていますから、もともと軍事侵攻は最終的なオプションでした。

文攻武嚇。プロパガンダやフェイクニュースによって台湾の政治に影響を与え、軍事的な威嚇で圧力をかける。これにより台湾人の側が折れて、中国の侵略を受け入れるようにする。というのが、中共の基本戦略です。

実際、2018年の統一地方選挙での与党大敗や高雄市長選での韓国瑜の勝利は、中共の工作員による世論誘導が功を奏したものだったと判明し、政府はフェイクニュース対策を強化しています。

軍事的な威嚇はむしろ台湾人の反発を招いているとはいえ、大多数の台湾人が現状維持を望むのも、現実の軍事侵攻を恐れているからだと考えられており、一定の効果をあげていると言ってもいいでしょう。

現状で中国が台湾侵略を放棄することはありえません。中共にとっての理想は台湾側が折れて自ら下ることですが、とはいえ軍事侵攻を戦略からはずすことは100%考えられません。

ロシアが失敗したから中国が台湾侵略を考え直す?絶対ありません。「あいつらは失敗したが我々ならもっとうまくやる」これが中国人の考え方です。むしろロシアが失敗したからこそより強く中国を警戒すべき。中国への警戒を緩めるような誘導は、中共による工作だと疑ったほうがいいと思われます。