「本格中華」なら台湾より日本のほうが食べられるという話

NNN ASIAアジア経済ニュースにはたまに台湾駐在記者の日常の話が載っていておもしろいのでたまにチェックします。

本日11月15日付けでも少し興味深い話が載せられていました。

短いので全文引用します。

台湾で生活をするようになって台湾料理のおいしさを知ったが、たまに食べたくなるのが北京や上海にいた頃によく食べていた中華料理だ。

ヒツジ肉の料理もその一つ。近所を散歩していた際に「羊肉」と大きな看板を掲げた店を見掛けた時は小躍りしたが、ネギと炒めた料理を食べてみるとヒツジの肉ではなく、ヤギの肉のようだった。脂分が少なくさっぱりしていておいしかったが、期待していた味とは違った。台湾ではスープの色が濃い牛肉麺をよく見かけるが、透明なスープの蘭州拉麺はまだ食べたことがない。

台湾は戦後、多くの人が中国から渡ってきたことから中国各地の本格的な料理を味わえると聞いたことがあるが、個人的にはまだそうした店に出合えていない。台湾の料理と融合したのか、それとも淘汰(とうた)されたのか。半世紀以上の時が流れれば、いずれも不思議ではないと思う。(祐)

https://www.nna.jp/news/show/2262844

私も中国留学以来、現地で食べていた本場ものの料理を食べたくなることがよくあります。

最近でこそ都内にガチな中華の味の店が多数あるものの、帰国した当時はそういう店がほとんどなく、中国留学経験者の間でどこに行けば本物が食べられる、どこの店は看板だけの偽物だという情報が飛び交っていました。

台湾に住んでいたころは、基本的には毎日台湾料理を食べていました。でも、やはり中国の料理を食べたくなることもあります。

そんな時は外省人系列の店に行ってみます。でも、この記事にある通り、だいたいの店は台湾人の好みに合わせてあるので、もちろんそれでもおいしいのだけれど、「中国舌」を満足させたいときには物足りない場合も多々あります。

例えば羊料理は、台湾では沙茶醬で味付けされることが多く、西北に多いクミンやフェンネルで味付けしたものはあまりありません。せいぜい夜市の串焼き屋で近いものを売っているぐらいですね。

ただ、ヤギを食べるのは外省人由来なんじゃないかと思います。私が留学していた西安では、羊肉といっても安い店ではヤギ肉でした。この記者は仕事で赴任していてお金に余裕があったので、お高い店でいい羊肉ばかり食べていたからそう言うのかもしれないけれど、貧乏留学生にとってはヤギ肉はおなじみの味です。

蘭州拉麺については私も探したことがあります。しかし蘭州拉麺の店はありませんでした。

台湾の牛肉麺は中国のものとはまったく由来が違います。もともとは、台湾に逃亡してきた国府軍にくっついてきた四川の人が作った牛肉スープがもとで、そこに麺を入れるようになったのが、記事にある「色が濃い牛肉麺」紅燒牛肉麵です。それとはまた別系統の清燉牛肉麺も、蘭州拉麺とは別物です。

台湾人はどうやらコシのある麺よりコシがないやわらかめの麺を好むようです。台湾で人気の麺の店に行くと、だいたいがコシがない麺でしたし、手打ちでコシがある麺の店はあまり混んでいませんでした。

10年ほど前に旅行で台湾に行ったおり、西安名物の羊肉泡饃を出す店を見つけて立ち寄ったことがあります。しかしその店の羊肉泡饃は西安のものとは具材とか味付けがいろいろ違っていました。食後に店の人と話すと、やはり台湾人の舌に合わせて変えてあると言っていました。

そういえば「北平烤鴨」の店にも行ったことがあります。蒋介石政府は南京を首都にしていたので北京のことは北平と呼んでいました。確かにおいしかったけれど、北京で食べたほどではないかなというのが正直な感想です。北京では全聚徳なんて高級店には行けませんでしたから、そこらへんの街角にある庶民的な店で食べたんですが、それでも台北で食べた「北平烤鴨」よりおいしかったです。

確かにガイドブックなんかを見ると、台湾では中国全土の「本場の中華料理」を食べられると書いてあったりします。

まあ実際、北京料理、広東料理、上海料理、四川料理の四大中華料理はだいたい食べらはします。ただ、本当の本場ものかというとちょっと疑問ですね。広東料理は食べに行ったことないんでわかんないですけどね。

四川料理は、国共内戦後に渡ってきた人たちより、意外と最近できた店のほうがガチな味に近い場合があります。

まあいずれにしても、台湾で「本場の中華料理」を食べるのはあまり期待しないほうがいいですよ。戦後、広い地域から中国人が台湾に逃げ込んだといっても、人口割合でせいぜい15%程度です。70年前には本場の味でも、現在では融合というよりはマジョリティの台湾人の側に吸収される形でその味も変わっています。かつて「本場の味」だった各地の中華料理も、今では台湾の食文化の一つに過ぎません。

本場の中華料理を食べたいなら池袋とか新大久保とか高田馬場に行ったほうがいいです。あとは本郷三丁目や上野にもちらほら。客の大半が中国人で、注文が中国語でしかできないような店ならはずれはありません。

台湾で食べるなら、やはり台湾料理にしておくべきです。