今日から鬼月

本日8月8日はオリンピックのせいで3週間も待たされた『ラブライブ!スーパースター!!』第3話の日!

なのと同時に「鬼月」の初日でもあります。

地獄から「好兄弟」が地上に出てくる期間なので、地上の生者はいろいろ気を使わねばなりません。




「鬼」とは

まずそもそも「鬼」について。

鬼は日本人がイメージする頭に角を生やして虎柄の腰巻きをつけた妖怪ではなく、仮面ライダー響鬼でもなく、霊のこと。

学研の『漢字源』で「鬼」を引くとこうあります。

{名}おに。死人のおばけ。おぼろげな形をしてこの世にあらわれる亡霊。

解字
象形。大きなまるい頭をして足もとの定かでない亡霊を描いたもの。

さすがに言葉を扱う専門家となれば、日本でも鬼の正しい意味を理解しています。

じゃあなんで日本では弱々しい亡霊が筋骨たくましい妖怪の姿になったのかというと2つの理由が考えられます。

まず、本来の意味での鬼がこの世にやってくるとされる「鬼門」が丑寅の方角だということ。ここから牛の角と虎柄パンツが連想されました。

つまりダジャレです。

もう一つ、仏教の流入とともに中国で作られた地獄画も伝えられたこと。中国製の地獄画には亡者を苛む獄卒が描かれています。

獄卒は亡者たちより体が大きく筋骨隆々。日本人はなぜかこの獄卒のほうを「鬼」だと思い、牛の角と虎柄パンツを履かせてオニのキャラクターを作り上げていったのでしょう。

しかし、獄卒っていうのは陰間、つまり死後の世界の卒=兵員として亡者を攻め立てるから強そうなのであって、そこに「鬼」の本質はありません。

思えば日本人は言葉の本質を理解せず略語を作りますよね。ウインナーソーセージをウインナーと略したり新型コロナウイルスをコロナと略したり。

言葉にある全ての本質をひっぺがすのが日本文化の根底だとも言えます。「仏」の本質を理解せず、死者の魂があの世に行くことを「成仏する」などと表現するのは日本人だけです。

さて閑話休題。日本人の言葉の認識に対するいい加減さは置いといて、鬼月とは本来の意味での鬼が地上に出てくる月ということです。

鬼月の風習

鬼月の成り立ちについては諸説あるのでめんどくさいからここでは解説しません。

もともと閩南、現在の福建省あたりの風習だったものが、移民とともに台湾にももたらされました。

鬼月の間には主に3つの祭儀が行われます。

まず7月1日。この日は地獄と地上を隔てる門が開く日です。地上にやってくる亡者=好兄弟を迎えるため食べ物が捧げられてお祭りが行われます。

そして7月15日、この日は地獄を掌管する中元地官大帝の誕生日である中元節。中元地官大帝の属性は赦罪で、地獄に落とされた亡者が恩赦により解放されます。

台湾では中国ででっち上げられた仏教行事の盂蘭盆会と習合しており、7月15日には「中元普渡」の法会が行われて亡者の救済が祈られます。

最後に7月最終日。この日は地獄の門が閉じられます。地上に戻ってきた亡者がそのまま居残らないように送り返します。

普渡の法会が行われたのに亡者を送り返すっていうのは矛盾していますが、こちらは鬼月をきっちり終わらせて地上の人間を安心させるためのものでしょう。

台湾では7月15日には先祖供養や墓参りはしません。だって普通自分の先祖が地獄の亡者になってるなんて思わないでしょ。

盂蘭盆会の根拠となっている『盂蘭盆経』も、目連尊者が他の僧侶に施しを行うことで餓鬼道に堕ちた母親を救うという話で、墓参りしろなんて内容ではありませんし。

鬼月の禁忌

台湾では鬼月には「好兄弟」の陰気を受けないための様々な禁忌があります。

その禁忌は5つだったり10個だったり様々。

そんな中22もの禁忌を挙げている記事

父親節鬼門開!「22個禁忌」千萬別忽略

があったので、この記事から鬼月の禁忌を拾ってみます。

1.好兄弟を「鬼」と呼んではいけない

2.泳いではいけない:水中に転生ができずにいる好兄弟がいたら入れ替わられてしまうから

3.30年以上の古い部屋を見てはいけない:好兄弟は以前住んでいたところを徘徊するから

4.夜半に病院に行ってはいけない:病院で亡くなった好兄弟はそのときの記憶で病院を徘徊するから

5.夜に廟宇の近くに行ってはいけない:多くの好兄弟は夜になると神様の救済を求めて廟に集まるから

6.夜に口笛を吹いてはいけない:口笛の周波数は陰間と似ており好兄弟を呼び寄せるから

7.夜に衣服を干してはいけない:好兄弟が濡れた服の中に入り込むから

8.符咒=御札を持ち歩いてはいけない:ありがたい御札ならその内容を聞こうと好兄弟が集まるし、駆邪の御札なら好兄弟を傷つけてしまうから

9.夜半に騒いではいけない:騒ぐと好兄弟がびっくりして、自分の睡眠の質が落ちるから

10.前にいる人の肩をむやみに叩いてはいけない:それでびっくりさせると好兄弟がその人に入り込みやすくなるから

11.夜半に電話してはいけない:好兄弟に電話が通じてしまうから

12.山林や広い場所で写真を撮ってはいけない:好兄弟が写りやすいから

13.夜半にお香をつけてはいけない:好兄弟が引き寄せられやすくなるから

14.陰廟をお参りしてはいけない:陰廟は鬼月には陰気が満ちて好兄弟に出会いやすくなるから

15.「死」を口にしてはいけない

16.肝試しや筆仙、碟仙をしてはいけない

17.夜半にホラー映画を見てはいけない:好兄弟が集まってきていっしょに見ようとするから

18.中元普渡の時に汚い言葉を使ってはいけない:好兄弟が怒るから

19.ホテルに泊まるときはよもぎかセージをもっておく

20.手術は昼間にしたほうがいい

21.引っ越しで新しい家に入るときは正午にするほうがいい

22.結婚するときは夜に爆竹を鳴らさない:じゃないと夫婦関係が壊れやすい

とまあ、地獄の亡者の中には当然近代に亡者になった人もいるわけで、電話や写真に対応しているようですね。ホラー映画を見ていると集まってきていっしょに見ようとする好兄弟はちょっとかわいいかも。

いくつか解説すると、まず14番の陰廟について。

台湾には孤魂信仰があります。これは日本で言う無縁仏、家族に弔われなかった魂や、戦争や天災、疫病などで亡くなった人の魂は孤魂となり、適切に祀らなければ悪霊となって害をなすというもの。

この孤魂を「有應公」「大墓公」などといった神様として祀ったのが陰廟です。


土城義塚大墓公


士林有應公媽廟:有應公の左右は土地公・土地婆

鬼は陰の気なので、陰間が地上につながる鬼月は陰廟の陰の気が強くなりやすいから好兄弟に出会いやすくなるというわけです。

そもそも陰廟自体あまりお参りしないほうがいいなんてこともいいます。私はそういうの信じないし気にしないので、見つけたらほいほい入りますけど。

もちろん信じてはいなくてもちゃんと礼節を守ってお参りするようにしています。

16番の筆仙、碟仙、これは日本で言うこっくりさん的な占いことです。

19番のよもぎやセージは辟邪の効果があるからということですが、8番と矛盾します。

20から22については、鬼月は手術や引っ越し、結婚そのものをしてはいけないというものもあります。

また、生魚や梨を食べてはいけない、氷を口に含んではいけないなんていう禁忌もあります。

全部守ってたら生活できないっていうレベルで、台湾人もきっちり守っている人はほとんどいないんじゃないですかね?