バイデン政権が誕生する前、台湾ではトランプ大統領が推し進めた反中親台路線がバイデン大統領によって覆されるのではないかと心配する声が揚がっていました。
しかし、バイデン政権はまず大統領就任式に蕭美琴駐米代表を招き、反中傾向が強いブリンケン国務長官をアジア太平洋地域の戦略担当に起きました。
ブリケン国務長官は、親台派としても知られるポンペオ前国務長官による中国政府によるウイグル人に対するジェノサイド認定をそのまま受け継いでいます。
「現在のところ」という前置きをつける必要はあるかもしれませんが、バイデン政権がトランプ政権から一転、対中融和に動く心配はなさそうです。
会員議員が「一つの中国」政策廃止決議案を提出
武漢肺炎のパンデミック以来、アメリカではウイルス発生源の中国に対する非難が高まり、逆に完璧に民主的な手法で感染症拡大を抑え込んだ台湾への評価が高まっています。
アメリカ下院議員のトーマス・ティファニー氏、及びスコット・ペリー氏(共に共和党)は、米国議会に対して「一つの中国」政策廃止決議案を提出しました。
この決議案では、アメリカが堅持している「一つの中国」政策はすでに過去のもので、台湾人にもアメリカ人にも何も利益がないと指摘し、台湾の民選政府に合法性があることを認めて米台関係を正常化し、お互いに大使を派遣すべきであるとしています。
これはつまり、アメリカは台湾を独立国として承認すべきであるということです。
中国は一つでも問題ない
この決議案はさすがに承認を得るのは難しいと思います。
ただ、米国議員の中から「一つの中国」政策を見直そうという動きが出てきたこと自体には価値があります。
しかし私から言わせればアメリカがすべきことはそこじゃないですね。
「一つの中国」とは、世界中に中国はただ一つであるということ。そしてその中には台湾も含まれるというものです。
蒋氏政権の時代には、中華人民共和国と中華民国双方が自分たちが正統中国でありお互いの領土が自分たちのものであると言い張っていました。
李登輝政権になってから中国と台湾が協議し、お互いに「一つの中国」原則を堅持しつつ、その主体はどちらにあるかは棚上げするという同意がなされたとするのが「92共通認識」です。
しかしその当事者である李登輝元総統は「92共通認識」の存在そのものを否定していました。
李登輝先生の目標は台湾を「一つの中国」からパージし、中華民国体制を脱して台湾を明確な独立国にすることでしたから当然です。
日本人の中にも台湾を支持すると言いながら、正統中国は台湾のほうだなどとトンチンカンなことを言っているバカがいますが、台湾人が望んでいるのはそんなことではなく、台湾が独立国家として認められることです。
中国がこの世に一つなのはまったく問題ありません。
問題なのは、その中に台湾を入れているということです。
アメリカがすべきことは、中華人民共和国と中華民国「2つ中国」が併存すると認めることではありません。
そもそも台湾側には「一つの中国」などという認識はどうでもいいことです。
今現在台湾が中華民国憲法を破棄して台湾国としての建国を宣言できないのは、中国による侵攻の懸念があるからです。
台湾は当然中国には属さないけれど、明確に独立を宣言することで中国からミサイルが降ってくるのは恐いという台湾人は大勢います。
そういう国民意識を無視し、国民を危険にさらしてまで独立を宣言すれば政権がゆらぎます。
だからこそ、李登輝総統、陳水扁総統、蔡英文総統など本土派総統は、本土派政権を維持するためにも現状維持路線からゆるやかな本土化政策をすすめるしかなかった。
アメリカが本当にするべきことは、台湾防衛を強化していざというときの不安を払拭し、台湾が正式に独立したときに承認することです。
最も、アメリカ側もそう簡単には急展開できないはずなので、この決議案の提出が将来的な台湾独立の第一歩だと見るならば歓迎すべきことでしょう。