教育部『國家語言發展法』を受け小中学校での各民族言語教育の基準を策定

日本の文部科学省に相当する台湾政府の教育部は昨9日「本土語文」過程を小学校と中学1年・2年は必修に、3年は選択課程にすることを定めました。

これは2018年に立法院を通過した『國家語言發展法』に従ったもので、2022年の新学期から実施されます。




台湾は多言語国家

日本は単一言語国家なので、他国もそれぞれ一国に一つの言語があると思っているアホも多いです。

笑福亭鶴瓶がNHKの番組でブラジル人労働者が多い愛知県豊橋市を訪れたおり、ポルトガル語が聞こえてきたのを「ブラジル語が聞こえてきた」と言い出したときは呆れました。

スイスのイタリア語圏出身のエマ・ヴェルデちゃんがイタリア語をしゃべるのを聞いて「なんでスイス語じゃないんだ」などと言い出す知障もガチで存在するのがすごいです。

この前なにかのアンケートで日本人の8割近くが台湾に対して親近感を抱いているとの結果が出たそうですが、台湾人が使う言語が何かを理解していない日本人はかなり多いです。

翻訳の募集広告などを見ていると「台湾語翻訳者募集」などと書いている翻訳会社があって、こんな会社は絶対信用できないと思います。

台湾は多民族国家であり、多言語国家です。

古来より台湾には多くの原住民が暮らしてそれぞれの言語を使い、17世紀以降は中国からの福建人や客家人の入植があり、19世紀末には日本の統治があり、戦後には中国人敗残兵やそれに付随した中国人たちが流入してそれぞれの言語を持ち込みました。

現在台湾で使われている言語は、公用語の中国語、最大多数のいわゆる台湾語と呼ばれるホーロー語、客家人の客家語、それぞれの原住民の言語が主流です。

その他、日本の統治時代に教育を受けた世代の日本語、インドネシア人労働者が用いるインドネシア語なども少数派ながら台湾では日常的に聞かれる言語です。

民主化以降重視されるようになった各民族の母語

日本の統治以降、台湾ではそれぞれの民族の言語の使用は制限されてきました。

統治直後は日本語が強制されたわけではないものの、台湾人(中国からの移民系台湾住民)のために作られた公学校、原住民のために作られた蕃人公学校(後に公学校に統合)では日本語による教育が行われました。

さらに、日中戦争が勃発した1937年には台湾総督府は台湾で皇民化運動を開始し、漢文の使用を禁止、日常的に日本語を用いる台湾人家庭は「国語家庭」とされて優遇し、学校で台湾語を使った生徒には体罰を加えるなど事実上の言語弾圧が行われました。

戦後に日本が台湾を手放した以降、台湾は国民党の統治下に入ります。

1949年に国民党が中国共産党に敗北してからは、国民政府が台湾に移り、台湾全土を占領。

公用語を中国語(マンダリン=北京官話)に定めると同時に、それまで使われていた日本語はおろか台湾語、客家語、原住民の言語の使用も禁止し、台湾総督府よりさらに強制的に中国語を使わせて言語の統制を行いました。

もっとも、その時代に台湾に留学した人によれば、それでも台湾人は台湾語を使っていたとのこと。

1988年に蒋経国が死去。蒋家独裁が終了し副総統だった李登輝が総統代行に就任。

1990年に李登輝が正式に総統に就任すると、動員戡乱時期臨時条款が撤廃して戒厳令が終了。それにともない言語の統制も薄れていきます。

1993年には、郭為藩教育部長(日本の文部科学大臣に相当)が小中学校での母語教育導入を決定。

1996年には小学校で「郷土教学活動」が導入され、その中で郷土言語の授業も行われました。

2020年には、日本在住の林建良医師が開始した日本政府に台湾人の国籍記載を中国人から台湾人へと改めることを目指した「正名運動」が、台湾を中華民国から台湾へと名を改めるという形で輸入され、その中で本土意識が高まります。

本土意識とは台湾本土への帰属意識という意味です。

いまだ日本では台湾に対して中国が「中国本土」などと、まるで台湾が中国に属し、中国が台湾にとっての本土であるかのような認識をもっている知能が低い層がいますが、台湾における「本土」とは台湾そのものです。

そうした中で、それぞれの民族で「台湾に生きるそれぞれの民族」としての新しいアイデンティが生まれて、それぞれの言語も見直されるようになりました。

有線テレビでは、客家チャンネルや原住民チャンネルが作られて、それぞれの言語で番組が作られるようにもなっています。

こうした流れの中で台湾人は自分たちの国が多文化社会であることを再認識し、同時にそれぞれの文化を尊重する社会認識が醸成されていきました。

それにより多様性を許容する国民性が育まれ、その副産物的にアジアで初めての同性婚の合法化にもつながりました。

ここらへんが、「自己人」つまり家族や組織の「身内」以外は敵とみなす中国人とは異なるし、同調圧力による付和雷同をよしとし、平均から外れたものは差別する民族性の日本人とも根本的に違います。

『國家語言發展法』

2018年末、立法院を『國家語言發展法』が通過しました。

https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=H0170143

この法律の第1条では「この法律は国家の多元文化精神を尊重し、国の言語の伝承と復興、発展のために制定された」としています。

そして第3条で「本法律で指す国家言語とは、台湾の各固有エスニックグループが使用する自然言語と台湾手話である」と定めており、第4条で「国家言語は一律に平等で、国民が使用する国家言語は差別と制限を受けるべきでなはない」としています。

この4条は特に重要です。なぜなら、蒋氏政権による「中国化」政策で唯一「国語」として規定された中国語の優位性が法的に明確に否定され、台湾国内にはどれか他の言語に対して優先される言語はないと規定したからです。

もちろん、国として全国民が意思疎通できる共通言語は必要でしょう。

皮肉にも蒋氏政権が台湾人に強制した中国語が現在ではその共通語となっており、それを覆すのは難しい状況ですが、もはや中国語が台湾人に中国人意識を植え付けるためのものではなく、単にツールとしての言語の一つになった意味は大きいです。

『國家語言發展法』を受け、教育部は本土語文の教科を小学校では毎週1時限は必修、中学校では1年生2年生は必修で3年生は選択性にすることを定めました。

これまでも小中学校での台湾語や原住民言語の教育はされていましたが、国としての方針が明確に定められたことでより台湾の各言語の教育が盛んになることでしょう。