「省籍対立」って何十年前の話だよ

毎日新聞の「台湾総統選にみる「省籍」 世代移ろい薄れる対立=福岡静哉(台北支局)」という記事の冒頭にこんなことが書いてあります。

 日本で台湾の政治について語る時、「外省人」と「本省人」という「省籍」の違いが強調される傾向がある。だが実際は若い世代を中心に、省籍を意識しない人が増えている。民進党の蔡英文総統(63)が再選された総統選の取材を通じてそう強く感じた。

これ有料記事なので記事全体でどんなことを言っているのかは不明ですが、この部分は正しいです。毎日新聞でも台湾について正しいことを書くことがあるんだなと感心しました。

日本人の9割は台湾のことを何もわかっていなくて、残り1割のうち9割は台湾のことをわかっているつもりでわかっていません。

台湾では統一派の外省人と独立派の本省人が争ってる?何十年前の話だそれ。

しかし実際日本には今この時代にもそんなこをを言っている連中が実際にいます。それが残り1割のうちの9割です。こういう連中はだいたい小林よしのりの『台湾論』あたりで得た知識で止まっていて、現実の台湾のことなど何もわかっていません。

『台湾論』が出版されたのはもう20年ほど以前。実はその時点でも、省籍対立なんていうものは名残があるだけで有名無実になりつつありました。

というより、外省人=統一派、本省人=独立派という単純極まりない分け方自体現実に即していません。

2003年に行われた台湾正名運動デモ。私も参加しましたけど、このとき凱達格蘭大道のメインステージで司会を行っていたのは外省人の女性でした。

外省人による外省人台灣獨立促進會という組織も存在します。

一方本省人も必ずしも独立派ではありません。先般の選挙で大敗した責任をとって党主席を辞任した国民党の吳敦義氏は本省人ですが、かつて「独立を唱えるのは白痴だ」などと失言をしています。

そもそも台湾の人口の85%という本省人がみんな独立派なら、馬英九政権が生まれることはなかったし、今回の総統選でも蔡総統はもっと高い得票率だったはずです。

独立派内部ですら、右派と左派の対立のようなものがあります。民進党の候補者選びで、今回副総統となった頼清徳氏をかついだのは右派系統でした。

独立派の右派は、蔡総統が台湾の民意の最大公約数をとって現状維持しつつ中国と距離を置くというのが気に入らないのですね。

私個人としても台湾はとっとと中華民国体制を脱するべきだとは思います。

しかし、中国の意を受けた統一派、というより売台派がいまだ力を持っている現状、右と左で争っている場合ではありません。台湾独立に関して急いては事を仕損じるという言葉ほど適切な表現はないでしょう。

今回は右派もギリギリになって蔡総統支持を打ち出し、一致協力したのはよかったと思います。

てなわけで、話は『台湾論』やらネットの情報やらを聞きかじってわかったつもりになっている連中が考えるほど単純ではないのです。

外省人と本省人の対立がーなどと言っているのは、私は台湾の現状をまったく理解できていませんと言っているようなものですね。