蔡英文総統、大食い美女千千ちゃんの番組にゲスト出演してしまう

台湾華語のリスニング能力を鍛えるためによく台湾人ユーチューバーの動画を見ています。

その中でも内容がおもしろくて楽しみながら勉強ができるのが、日本在住の台湾人阿倫さんの阿倫頻道、そして台湾の大食い美女千千ちゃんの千千進食中です。

千千進食中に蔡英文総統が登場

台湾では芸能人並に知名度がある千千ちゃん。

過去の動画には五月天のメンバーやマレーシア出身の人気歌手梁靜茹さんなど、かなりの大物をゲストに呼んだものもあります。

しかし、今回公開された動画はその日ではありません。

なんと台湾で最も大物と言っていい蔡英文総統が登場!

千千ちゃんとベトナム料理を楽しんでいます。

蔡英文総統が登場するのは後半から。

前半は台北で食べられる東南アジア諸国料理が紹介されています。

台湾に住んでいたころは、タイ料理、ベトナム料理、インドネシア料理、ミャンマー料理、カンボジア料理など東南アジア各国の料理もよく食べました。

千千ちゃんが1位に選んだタイ料理の店は、私も3回ぐらい行ったことがあります。

台北では普通の食堂と比べて倍ぐらいの価格帯であることが多いタイ料理ですが、あの店は他の台湾料理とほぼ変わらない値段で提供していてしかもうまいので超おすすめ。

まあ、場所は教えないけど。でもまあ有名な餃子の店の近くだから知ってる人は知ってるでしょう。

今回蔡英文総統がゲスト出演したのも、台湾に東南アジア各国の人が住み、各国料理をいろいろ食べられるというのと関係があります。

千千進食中に蔡英文総統が出演した背景

最近よく聞く「ダイバーシティ」。お台場の商業施設のことかと思いきや「多様性」を意味する言葉だそうで。

じゃあ「多様性」でいいじゃねえかと、ひらがなでたようせいと書いてもダイバーシティより短いわ!

日本人は古代より「和を以て貴しとなす」。ムラ社会でなあなあで馴れ合い、身内の理論のほうを重視します。

出る杭は打ち、堕ちた者は蔑んで自らを「中間」に安住させようとする民族性で、だから差別もいじめもなくなりません。

日本人の言う「和」は付和雷同のことで、八紘一宇なんていうのは他者を無理やり同化しようとする思想。多様性とは正反対の言葉です。

日本に支配され、中華民国に支配された台湾もかつては多様性に対して寛容ではない部分もありました。ただ、多民族国家を古代に「大和民族」という枠でひとくくりにして千年以上たつ日本とは違い、様々な民族が暮らす台湾は日本よりはるかに多様性に対する理解度が高いです。

李登輝先生が総統時代に提唱した「新台湾人」は、大和朝廷のように全部同化しないと東北蝦夷のように滅ぼすぞということではなく、台湾総督府のように日本の統治に服属しないとセデック族のように殺戮するぞということでもなく、もちろん228事件の蒋介石のように中華民族に従わないと虐殺するということでもなく、それぞれの民族の違いを認めながらも台湾に暮らす「台湾人」として団結しようというものでした。

台湾における多様性への理解と許容は民主化以降に加速しており、その象徴とも言えるのがアジアの国家で初めての同性婚合法化です。

それと同時に行われているのが「新移民」受け入れの推進です。

台湾にはポリネシア、ミクロネシアなどを含むオーストロネシア人の祖先とされる台湾原住民が、政府が認定しているだけでも16族おり、17世紀以降にオランダ人によって連れてこられたり、あるいは鄭芝龍のような海賊商人とともに自ら渡ってきた中国人がいます。

中国人にも、福建からのホーロー系、広東からの客家系、戦後に敗残国府軍とともに渡ってきた中国各地の難民など様々います。

軍政時代に台湾に亡命したミャンマー人なども一部定着していますし、一時期はやった「越南新娘」として台湾人と結婚したベトナム人もいます。

台湾はもともとそうした多民族国家であり、移民国家でもあります。

そんな台湾に近年増えているのが、建築や介護職などのために台湾に渡ってきたインドネシア人をはじめ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイなど東南アジアからの新しい移民たちです。彼らは「新移民」と呼ばれます。

もっとも新移民は東南アジアの人々だけに限られず、新しく中国から渡ってきた中国人、台湾で自分の事業などを始めた日本人なども含まれます。

蔡英文総統はこれら新移民がもたらす文化は、台湾文化をさらに豊かにするものだとして、台湾が民族的に多様になることを肯定するとともに、新移民のもつそれぞれの国の文化を台湾の新しい文化として広める政策も推進しています。

食文化においてもまた同様。

今回千千ちゃんの動画に蔡総統が出演したのは、実は総統府側が公開している動画のゲストとして呼ばれたからでした。

千千ちゃんはお母さんがタイ人の台タイハーフ。新移民との宥和政策PRにはもってこいの人材です。

総統府側の動画では、蔡総統は東南アジアからの移民の食文化が台湾に新風を呼び、さらに文化を豊かにすると強調しています。

ただ、そこで自分たち側の動画だけではなく、民間人の動画にも参加してしまうフットワークの軽さが蔡総統の魅力です。しかも自らコメントまで入れています。

民衆とともにあれが史明先生の教え

台湾人ユーチューバーだけではなく、日本人ユーチューバーなどともコラボし、民衆に近い親しみやすい総統像を作り出している蔡英文総統ですが、かつてはそうではありませんでした。

2012年の総統選に立候補し、馬英九に破れた蔡総統に対し、9月に亡くなった史明先生はもっと民衆のほうに自ら降りて歩み寄るようにと助言したといいます。

それ依頼、民衆にできるだけ近づくように努力し、2016年に当選したといういきさつがあります。

蔡英文総統の誕生は、もちろん馬英九政権への不信感が頂点に達したことが大きな要因ではあるとはいえ、蔡総統自信のこうした努力もまた背景にはあるのです。

ユーチューバーの動画にも出演して、いじられながらもニコニコと偉ぶらない小英総統の姿は、総統府資政になりながらも庶民の立場であろうとした史明先生の思想を体現したものです。