【3万年前の航海 徹底再現プロジェクト】台東からの丸木舟が与那国島に到着

国立科学博物館は、数年来「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」を進めてきました。

日本列島に人が住むようになったと推定されているのは3万年以上前。当時は北海道の一部が大陸とつながっており、陸路で渡ってきた人もいたようです。しかし大部分は海を渡ってきたと考えられています。

このプロジェクトは、その中でも最も難関だったと想定される台湾から黒潮を横切るルートで沖縄へ渡るために、どんな航海術が用いられてきたのかを、実際の航海実験を通して解き明かそうとするものです。

これは、日本の国立科学博物館と、台湾の国立台湾史前文化博物館が協力して行っています。

2016年からの試行錯誤

この実験には様々な困難があり、その中の一つが船の材質を探ることでした。

3万年以上前、どんな船が使われていたのかまったく不明です。だから、現地にある素材や、現在に残る伝統的な船から推測するしかなかったのですね。

2016年、まず草で作られたカヌーで与那国島から西表島までの航海が試されました。しかし、これは潮に流されてうまくいきませんでした。

次いで2017年、台湾からの出発地である台湾東南部、花蓮と台東の間ぐらいに住む原住民・アミ族に伝わる竹の筏を作って試されました。この竹の筏での実験は、2018年にも試されています。しかし、航海中に竹が割れるなどして長距離航海には向かないことがわかりました。

それと同時に丸木舟も制作され、千葉県でのテストなどをを経て、本番は丸木舟で行われることが決まりました。

船の制作と並行して、漕ぎ手の訓練も行われています。

2019年6月、本番航海

本番に使われる丸木舟は、3万年前と同じように石器を使って木を切り倒し、そして加工するところまで行われました。

こうして作られた5人乗りの丸木舟は「スギメ」と名付けられ、7月7日、本番の航海に乗り出しました。

漕ぎ手は、日本人、台湾人、そしてニュージーランドのマオリ族の混成チーム。いずれもカヤックや爬竜船などに慣れ親しんだ人たちです。

もちろん伴走船がついて安全を確保してはいたものの、基本的に航海は漕手たちが風向き、昼は太陽、夜は星の位置などを基準に航海を行います。

そして本日7月9日、およそ200kmの航海を無事に終えて、スギメが与那国島に到着しました。

与那国島からは、天気が良ければ台湾本島を目視できるといいます。それほどの近い距離とはいえ、間には海の急流である黒潮が横たわります。

そこを人力だけで乗り越えたのは偉業といっていいでしょう。

沖縄県民の先祖は台湾原住民?

3万年前の台湾はまだ大陸と陸続きになっており、5万年前の時点で旧石器文化が存在しました。これは長浜文化と名付けられていて、およそ5000年前まで続いたと考えられています。

ということは、3万年前に船で与那国島、そして南西諸島沿いに沖縄本島まで渡っていったのは、この長浜文化人だったのだと思われます。

長浜文化人と現在のアミ族とのつながりははっきりしません。ただ、沖縄にはこの人の先祖はアミ族かも?と思わせられる彫りの深い顔の人がいることは確か。

つながりがはっきりしないと言っても、まったくつながりがないということもないでしょう。

今回の航海実験成功で、日本人の中の何割かに、台湾の長浜文化人の血が入っていることが確かめられました。

これで、より台湾と日本の縁が強まったと思うと喜ばしいです。