弘兼憲史氏が理解していない台湾独立の意味

まるまる1巻台湾編だとして、台湾界隈でちょっと話題になった弘兼憲史氏の『会長 島耕作』11巻をおくればせながら読みました。

内容的には、現在の台湾の経済状況を非常に詳しく取り上げており、また方向性としては台湾寄りということで好感を持てました。ただ経済の話をしているだけではなく、ちょっとしたスパイ映画のような展開もあり、漫画としても面白かったです。

ネタバレはしたくないので内容が気になる人は買って読んでください。継続して読んでいなくても、11巻だけ読んでも楽しめる内容になっているのは、弘兼先生の漫画家としての力量を感じます。

ただ、かなりしっかり台湾のことを調べてきた弘兼先生でも理解していないことがありました。

この巻の中で、こんなセリフがあります。

「ご存知のように
現民進党政権は
中国からの独立を
目指しており」

私はご存知ありませんでした。蔡英文相当もご存じないでしょう。

民進党政権、蔡英文総統、台湾の独立派。全て中国からの独立など目指していません。

なぜなら、台湾は中国の領土ではないからです。

中国の領土ではない台湾が、中国から独立する必要はありません。

「民進党政権が中国からの分離独立をくわだてている」というのは中国側の主張です。

現在の民進党の姿勢は、基本的には現状維持です。現状というのは、中華民国体制を維持しつつ、中国とは別の国家、政体を保つということです。

そして、台湾独立とは、その中華民国体制から脱却し、台湾国として独立することを指します。この点において、中国は一切関係ありません。

弘兼先生は、その根本のところを学ばずに描いてしまった。画竜点睛を欠くとはこのことでしょう。しかも、このセリフは台湾人のキャラクターが言っています。台湾人がこんなこと言うはずがありません。

日本には「台湾の中国からの独立を応援する」と言っている連中もいるわけですが、これは台湾の味方をしているつもりでいて、台湾が中国の領土であることを暗に認めているということです。つまり、ちゃんとわかっていないで的はずれなことを言っているのです。

こういうアホがいるから、李登輝先生は台湾の独立は主張すべきではないとおっしゃった。それは、台湾の独立と聞いた連中が、逆に台湾が中国の領土であり、そこから独立しようとしているのだと勘違いしてしまうからです。

台湾独立とは、今の台湾を支配している中華民国を捨て去ることであると何度言えば…

そういえば昔『勇午』という漫画でも台湾編があって、台湾独立派のキャラクターが反攻大陸のため云々言っててアホか!と投げ捨てました。

反攻大陸というのは、中国を追い出された蒋介石が再び中国にもどって巻き返してやるんや!という意味で唱えていた妄想です。

多分『勇午』の作者は、単に独立派が中国に対して反抗するという意味だと受け取って独立派に言わせたのでしょう。アホか!

『勇午』というのは綿密な取材に基づきリアルな話を組み立てる漫画だと聞いていたけれど、この程度かと思いました。

弘兼氏も『勇午』の作者も、ある程度台湾に対して好感は持っていても、実際のところちゃんと深いところまで台湾を理解しようとまではしていないわけです。次々と話を作っていかねばならないから、一つところに深く入っていられないというのはわかるけれど、だからって根本的な部分で間違ったらダメだろうと。

それぐらいの基本的なことは調べとけと。

枝葉の部分は間違ってもいいけれど、根っこの部分を間違えるのはあってはならないこと。不特定多数に読まれる作品でそれをやったら、間違った知識が拡散することになります。