改めて鄭成功を「台湾の国神」扱いする愚かしさを問う

今月22日、日本で言えば文部科学省に相当する文化部の鄭麗君部長が、芸能人文化人が集まるパーティーに参加し、挨拶回りをしているところ、突然鄭惠中という女性芸能人に平手打ちされるという事件が起きました。

文化部長といえばつまりは文部科学大臣のような要職です。政府要人に暴行を加えたことについて、鄭惠中はメディアのインタビューに答えて、鄭部長が中正紀念堂廃止を推進しているためだとし、翌23日に記者会見を開いて平手打ちについては謝罪したものの、その動機として同様のことを説明しました。

中正紀念堂をありがたがるバカ

中正紀念堂というのは蒋介石を顕彰した施設です。中正というのは蒋介石の号。

ハゲを顕彰した施設には何一つ興味はないけれど、あそこは馬鹿みたいに広いので、ショートカットのために中を横切るということは何度かしました。すると、日本人観光客がけっこういるわけです。このアホどもは何を蒋介石の記念施設などありがたがって来ているのかと呆れたものでした。

もっとも蒋介石をありがたがるバカは一部の日本人観光客だけではなく、国民党や一部統一派は当然崇めているわけです。

今回の事件でも前台北市長郝龍斌、新党党首郁慕明などが、鄭惠中を擁護する発言をしています。

客観的に見て、蒋介石にも一応の台湾に対する功績はあります。

それは日本が台湾の統治権を放棄した後に空白地帯となった台湾を占領したことにより、台湾が中華人民共和国に支配されるのが防がれたということ。

ただし、228事件や白色テロ、国連脱退など一連のやらかしを見れば相殺どころかマイナスポイントにしかなりません。

鄭麗君文化部長は加害者を訴えず

台湾独立をこそひっこめているものの、台湾主体路線をすすめる民進党政権が、蒋氏独裁政権によりでっちあげられた蒋介石の神格化を台湾から排除しようとするのは当然のことです。

鄭麗君文化部長は今回の件については訴えるようなことはせず、Facebookで

麗君始終相信,自由民主是臺灣最珍貴的價值,臺灣社會有各種自由、多元的聲音,我們期待彼此能夠對話、討論,但萬萬不該以暴力形式表達意見。麗君個人受辱事小,但臺灣得來不易的民主不容受到傷害。我也要呼籲,臺灣社會當下必須理性、冷靜面對衝突,回歸公共議題的討論,不要再複製任何暴力行為。

麗君は常に自由民主こそ台湾で最も貴重な価値をもつものだと信じています。台湾には様々な自由、多様な声があります。私達はお互いに対話や話し合いを望んでおり、万が一にも意見の表現を暴力でもってしてはいけません。麗君個人が受けた侮辱は小さいこと、しかし台湾の得難い民主が傷つけられてはなりません。私は台湾社会は須らく理性をもって、冷静に衝突と向き合い、公的な議題にたちもどって、再びいかなる暴力も複製してはならないと呼びかけます。

とコメントしました。

一応解説しとくと、台湾ではへりくだった表現として自分の名前を使う場合があります。李登輝先生なども講演会などで聴衆に語りかける時は「登輝はこう考える」というような表現をされます。

鄭文化部長が非常に理性的で頭のよい人物であることがうかがわれます。

自分の不満を表明するために鄭惠中がふるった暴力は、蒋氏政権が台湾全土でふるった暴力と同質のものであると暗に示し、独裁政権から民主化した台湾の価値をあらためて考えさせる内容となっています。

鄭成功を台湾の「三人の国神」などと呼ぶ愚かさ

日本で「鄭成功」で検索すると、鄭成功が台湾では孫文、蒋介石と並ぶ「三人の国神」とされていると書いてあるものが大量に出てきます。

これはもともとは九州のシンクタンクが出したレポートに記されていたもので、それがwikipediaに転載された後、思考停止した連中がそのままパクっているためです。

これについて鄭成功を台湾の英雄扱いするのは的外れにも程があるにも詳しく書きました。

バカなネトウヨのたぐいが、鄭成功が日本人とのハーフだというだけで持ち上げたりしていますが、鄭成功は台湾に対してなんら寄与していません。

鄭成功がオランダから台湾を解放した?そもそもオランダは国として台湾を植民統治していたわけではなく、オランダ東インド会社が台南とその周辺の一部を占領してプランテーションしていただけにすぎません。

鄭成功の軍団はそこからオランダを放逐し、反清復明のための基地を置きました。占領者がオランダから中国人にかわったというだけのことです。

そもそも当時の台湾に台湾島全土を有効支配する政権はありません。中国は台湾を「自古以来」の中国の領土だなどという虚言を吐いていますが、台湾に漢人が至ったのはオランダ人が労働力として連れて行った明代後期。明朝も台湾は版図としていませんでした。だからこそ台南の支配を容認していた。

鄭氏政権も台南の一部を勝手に占領していただけです。

鄭成功はオランダを追い出した後数ヶ月で死亡しており、なんら台湾に寄与していません。

ただし、鄭氏政権や残された漢人たちによって鄭成功は神格化されました。

鄭氏政権が清に滅ぼされ、台湾が清の版図に入れられた時、台湾は初めて中華王朝の支配下となりました。しかし清朝は中華王朝ではあっても女真族の国であって、漢人の国ではありません。清国もまた、女真族に支配された巨大な植民地に過ぎませんでした。

さて戦後、鄭成功は同じく敗残兵の長であった蒋介石に「大陸反攻」のシンボルとして祀り上げられました。実力もないくせに失地回復を願って台湾を占領したという点では鄭成功も蒋介石も似ています。

「三人の国神」なるものにされたのは蒋介石の死後であるのは明らかです。

常識的に考えれば、鄭成功、孫文と並べて蒋介石を神格化するための意図であることは簡単に読みとけるでしょう。ていうか私は台湾でこいつら3人が「国神」などと呼ばれているのを聞いたことはないですけど。

鄭成功は一応伝統的に延平郡王という神様として祀られており、台湾各地の道教廟にも神像が置かれています。

しかし孫文は別に神様扱いはされていません。現在台湾を占領支配する中華民国においては「国父」とは呼ばれていても国神などとは呼ばれてはいない。そもそも孫文と台湾は、孫文が日本時代の台湾を訪れたことがあるという以外なんも関係ありません。

蒋介石の台湾占領を認めるのか?

鄭成功が台湾の「三人の国神」だなどと言うのはつまり、蒋介石が台湾における神だと認めるということ。

それはつまり、敗残兵の首魁・蒋介石が行った台湾占領とそれにともなう台湾人虐殺を肯定するということを意味します。

もちろん、wikiの記述をコピペしてる連中は、そこまで考えておらず、ただ思考停止してそう書いてあるからパクったというだけのものでしょう。

しかし、そんな言い訳はどうでもよろしい。

孫文、蒋介石とならぶ「三人の国神」の一人として尊敬されている。
wikipedia鄭成功の項

たしかに、今回鄭文化部長に暴力をふるった人物など、台湾の一部には蒋介石を尊敬しているという連中もいる。ただ、それは台湾の総意とはかけはなれています。

だから、台湾の歴史も現状も知らず、何も考えずにこれをコピペしている連中は、気に入らないからと国の要人に暴力をふるう連中と同レベルで愚かであると断言しましょう。