臭豆腐の町・深坑への行き方とかその他

これを言うとたいていの台湾人に受けるっていうのがあってそれは「我喜歡吃臭豆腐(私は臭豆腐が好きです)」。日本人にとって外国人が納豆が好きだと言うような感覚なんでしょうかね?わりと「マジか!」って空気になって、ほんとに日本人なの?って聞かれることもあります。

しかしこれネタで言っているわけではなく、本当に臭豆腐好きなんですよ。もちろん最初に食べたときはためらいもあったから、一番クセが少ない揚げたものからチャレンジしました。でもそれでおいしさを知って、焼いたのも煮たのも蒸したのもおいしくいただくようになりました。

豆腐の名産地深坑

新北市の深坑区は山に挟まれた谷あいの集落。日本で言うなら谷戸です。その谷底を流れる景美溪を伝って、山で生産された茶葉、樟脳、染料などが集積する流通の中心でした。特に日本時代には「深坑廰」が置かれ、台北南部の行政の中心ともなっています。

しかし戦後になって少しずつ道路が整備されるとともに水運が廃れると、流通の中心としての深坑の機能は失われていきます。そこでかわって行われるようになったのが豆腐づくりです。山に囲まれた土地ゆえに、周囲からは山で濾過されたきれいでおいしい水が集まります。そのおいしい水でつくった豆腐は味がよく「深坑豆腐」として知られるようになっていきました。

また国民党とともに台湾に逃げてきた中国人の中に臭豆腐の製法を知る人がおり、豆腐の名産地になった深坑でも臭豆腐がつくられるようになりました。おいしい豆腐で作った臭豆腐は当然おいしく、今では臭豆腐といえば深坑という感じになっています。

深坑老街への行き方

深坑の中心となっているのが、日本時代に整備され、栄えた深坑老街です。深坑老街には台北の中心部から直接バスで行く方法もあります。しかし、行きやすさやわかりやすさ、バスの本数の多さなどを考えるとMRT文湖線の木柵駅まで行ってからバスに乗り換えるのがおすすめです。

ということで木柵駅。文湖線はかつては木柵線と呼ばれていた路線です。大部分は地下ではなく高架の上を走ります。木柵駅は南側の終点・動物園駅の一つ手前です。

改札から出ると駅のすぐそばに聖尊廟という感天大帝許遜を主祭神とする廟が見えます。許遜が主祭神ということは、ここはおそらく浄明忠孝道の流れをくむ廟です。でまあ、この聖尊廟の横を通っていきます。

聖尊廟前のバス停は台北方面に行くバスが来ます。まずOKマートのほうに道路を渡り、その右のほうにあるバス停からバスに乗ります。木柵駅前から深坑老街に行くバスは

660
666
679
795
819

の5つです。

木柵駅からバスで15分~20分ほどの「深坑」バス停で降ります。降りそこなったら次のバス停で降りてもそんなに離れていないので問題ないです。

バスを降りたらセブンイレブンの方向に進みます。

すると1分もかからず深坑老街の入り口に着きます。このアカギの大木は1980年代に切り倒される予定だったところ、当時の総統・蒋経国が訪れた際に地元の人が陳情を入れて、そのまま残されるようになったというものです。蒋経国は蒋介石存命時には特務のボスとして白色テロを主導してきたために独立派から非常に嫌われています。ただ同時に蒋介石が掲げた「反抗大陸」を事実上放棄するとともに、民情をよく聞くということもしていました。それが政治的ポーズだったとしても、こうして地元の人が親しんだシンボルの木が実際に残ったという事例もあるわけで、一概に単純な悪のボスのような見方をするべきではないでしょうね。

整備された深坑老街

初めて深坑に行ったのは2003年のこと。その当時はこんな具合で、ただのごちゃっとした路地でした。

2008年に新北市は深坑街を「歷史風貌特定專用區」に指定。これは、古蹟を活かしながらもそこで暮らす人達の生活とも融合させていこうという取り組みで、今台湾で盛んに行われている日本時代の古い建物をリノベーションして商業施設や美術館などにするというのとはまた違い、より生活に密着した再開発をしようというものです。

その指定以降整備が進んで、2012年、深坑老街はレトロな雰囲気の観光名所へと生まれ変わりました。というわけで今の様子はこんな感じ。

雰囲気のよいインスタばえ的な通りになっています。

なにを勘違いしたのか寒天が「さむぞら」に。天ををそらと読むのはこの張り紙と雨宮天さんぐらいのものです。

ここが老街の終点。周囲を見ずに歩いていけば5分もかからず通り抜けられるぐらいの長さです。

老街の入り口から伸びる「中正橋」。これは日本時代にかけられた深坑橋でした。

橋のたもとにある后土の祠。后土は道教における地母神で、玉皇大帝を補佐する四御の一柱。通常台湾ではこうした祠には土地神である福徳正神が祀られることが多く、后土が祀られているのは珍しいです。

橋から望む景美溪。晴れいていたらもっといい景色のはず。

川の向こう側にもいくつか食堂があります。

臭豆腐食ってきた

もちろんわざわざ深坑まで行って臭豆腐を食わないなんてことはありえないですね。

臭豆腐を出す食堂は、老街の西側に集中しています。でもあの強烈な匂いが通りに充満しているということはありませんので、苦手という人も安心してください。

一人でも入りやすそうだった茴味さんに入りました。

値段が安めなのもポイント。

複数人で行く人はセットメニューを置いてあるお店に行くのもいいでしょう。

ということでまずモツ入り麻辣鍋の「腸旺臭豆腐」を選択。モツの他に鴨血も入っています。それほど辛くはなく、スープはおいしい。ただ肝心の臭豆腐のほうは台北で食べるのと比べて特別おいしいということもなく、ごく普通の臭豆腐です。いや味はおいしいですけど、期待値を上回ることはなかったという意味で。

15年前に行ったときは3人だったのでコース料理を食べています。そちらは鍋だけではなく工夫を凝らした料理があっておいしかったという記憶があります。多分お店ごとに臭豆腐自体の味も違うんでしょう。いろんな臭豆腐料理を食べられるコースのほうがより臭豆腐を楽しめると思います。

白米もあったけどせっかくなので魯肉飯。台北だったら大盛りになる量を盛ってくれました。味はそれなり。

豆腐とはまったく関係ないけれど、初めて見たメニューの「炒檳榔花」。檳榔樹の実は軽度の幻覚作用がある嗜好品としておもに台湾のおっさんに親しまれてきました。でも最近は道端にぺっされた檳榔をみることも少なくなりました。檳榔樹の花が食用になるというのは初めて知ったこと。きっと山間の町だからこそ使える食材なのでしょう。

花というけれど、食感はたけのこに近いぽきぽきした感じ。実は臭豆腐鍋より高い180NT$で、ちょっと躊躇しました。でも、きっと台北では食べられるものではないのでと思って注文してみて大正解。とてもおいしかったです。花だからおそらくは季節によって食べられないこともあると思います。メニューにあったら注文するのをおすすめします。

ところで豆腐以外に草仔粿も深坑名物です。これは草餅のようなもので、あんこ入りの甘いものもあれば、切り干し大根的な野菜の具が入ったしょっぱいものもあります。あんこ入りは日本の草餅とたいして変わらないので、どうせなら日本で食べられないような味のものを選んだほうがいいと思います。