台湾式精進料理「素食」は安くておいしくて野菜だけでも満足できる

もう20年近く前のこと、京都に旅行に行ったときに某寺の境内に精進料理の店があったので、せっかくだから食べてみようと思ったら入り口にあったメニュー見てあまりのボッタクリ価格に驚愕してやめました。日本の寺は健全な経済活動に勤しんでおられるようで。

ところで原始仏典である『スッタニパータ』にはこうあります。

詩を唱えて[報酬として]得たものを、わたくしは食うてはならない。

詩を唱えて得たものを、目覚めた人々(諸のブッダ)は斥ける。

人間のうちで売買をして生活する人があれば、かれは商人であって、バラモンではないと知れ。

修行者は、売買に従事してはならない。

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)中村元 訳 より引用

いやいや日本のお坊さんは商売にご精が出ますな。

素食こそ最もおいしく野菜を食べる方法なんじゃなかろうか

小道迷子さんの『台湾素食―たいわんすーしー。目からウロコの健康食』によると、台湾のお寺には素食を無料で提供しているところがあるようです。なるほど台湾には日本と違って仏教があるようだ。

私はベジタリアンではないけれど、台湾で野菜をたくさん食べたいなというときは素食の店に行きます。素食というのは本来仏教寺院で修行僧が食べている日本で言う精進料理のことです。ところで原始仏教やその流れをひいた上座部仏教では肉食は禁じていません。禁じているのは自らの手で生き物(植物も含まれる)を殺し食べること、自分のために殺されたものを食べることです。逆に托鉢をして肉や魚をいただいたら食べてもかまわないというか、托鉢でいただくものにそもそも選り好みなどしてはいけないわけです。

肉食を禁じたのは大乗仏教になってからで、それは完全に肉食を禁じるジャイナ教や、タブーではないけれどカースト上位の人は徳を積むために肉食を避けるというヒンドゥー教の影響を受けたのかもしれません。中国には大乗仏教が伝わったので中国仏教でも肉食を避けます。さらには「おいしいもの」への執着や煩悩を断つために味付けも質素にします。

素食はもともとそうした中国の仏教とともに伝わったものだと思われます。

日本時代にも現在のような台湾式素食があったのか日本語世代の方に聞いたことがありますが、その方は素食には興味がない人だったので不明でした。

私が思うに、今のような町中で誰でも食べられるような素食が広まったのは戦後のことではないかと思います。今ではどこででも素食を食べられます。

台湾人はだいたい道教と仏教がごっちゃになっているので、媽祖を拝んでいても仏教徒のつもりでいたりします。その点は神社に初詣に行って仏教経典を読んだこともないのに寺に先祖の墓があるってだけで臆面もなく仏教徒だと名乗ってしまうおおかたの日本人と同じです。しかし、中にはガチの在家仏教徒もいます。そういう人たちは当然素食しか食べません。

普段素食を食べていなくても、農暦の1日と15日は素食という人もいます。新月と満月の日である農暦1日と15日は廟にお参りに行く日であり、斎戒として肉食をしないということのようです。

また、宗教とは無関係に健康のために素食を食べる人もいます。

私の場合は、台湾にいたころは単に最近野菜足んねえなってときに素食を食べに行っていました。ぶっちゃけ素食の食堂は普通の食堂より1割2割割高なのでしょっちゅうは行きませんでした。今は台湾に行くと1回ぐらいは素食を食べます。素食は単純に野菜料理として非常においしいのです。

植物性のものしか使ってはいけないというしばりが、おいしい料理の技術を高めたのでしょう。寺院の食事ではなく、一般に向けて街で売られるようになったとき、おいしくつくるという要素が必要不可欠だったはずです。あと一応付け加えると素食で商売しているのは僧侶ではありません。

台湾素食ではいわゆる「グルテンミート」などを利用した「モドキ」肉料理などもあります。

素食ソーセージなどは、さすがに味は本物とは違うとはいえ、食感はそっくりです。

夜市にも素食屋台が出ることもあります。

これはこの屋台で食べた素麺。ダシはしいたけや昆布、野菜などでとってあり、動物性のダシのような濃厚なうまみはないけれどあっさりとしておいしいです。

臭豆腐も植物性のたれや付け合せだけにすれば素食。

これは素食弁当。日本時代の影響か、台湾でも昆布をよく食べます。

こちらは台北駅近くの懷寧街にある修圓素食で食べたあんかけ麺。修圓素食はお昼に行くといつも混雑しています。

私が一番好きで、一番多く行く素食のお店は、台北駅北側のバスターミナル+ショッピングモール「京站」の地下二階にある明德素食園です。明德素食園はチェーン店で、他に台北図書館の近くとか何軒かの支店があります。

明德素食園は自助餐方式で自分の好きなものを選べるというのと、料理の種類がやたら多いということ、そしてなにより味がよいというのが推しポイント。紅芋のペーストを揚げたお菓子なんかもおいしいです。