今日は地獄の門が閉まる鬼月最終日

今日は農暦7月30日で台湾では「鬼月」の最終日です。鬼月最終日は「関鬼門」中元地官大帝の恩赦によって開かれていた地獄と現世を隔てる門が再び閉められます。台湾人はやっと安心できるわけです。この日は夕方から「謝燈脚」という、地獄からやってきた霊=好兄弟に再びもとへ戻ってもらう儀式が行われます。

好兄弟は中元節の普渡法会で救われるはずなんですが、「関鬼門」である今日は「謝燈脚」を行い好兄弟にもとの地獄にお戻りいただくということになっているようです。好兄弟救われてなくね?

そのへんの矛盾は気にしない方向で。おそらく、中国仏教が盂蘭盆会という行事をでっちあげて、それが中元節に取り入れられる以前に行われていたものが残っているのではなかろうかと思います。

今日地獄に戻らないと脱獄犯扱いに

このへんいろいろ設定があってややこしいので、私も完全に理解しているわけではないですが、知っている限りの知識で解説すると、道教の世界では、人間が死ぬとまず地獄へ行きます。というと語弊があって、死者の国である「地府」へ行きます。地府へ行くとまず十殿閻羅の第一殿・秦広王が死者と謁見し、生前罪がないものはそこから天国へ送り、罪があったものは第二殿以降へ送られます。そして罪の内容に応じて十王それぞれが管轄する地獄で刑が執行されます。

地獄で罰を受けた死者は第十殿転輪王のところで、来世を決められて転生します。

つまり鬼月に地上に現れる好兄弟は刑を執行中の霊だということになります。

それが中元節で昇天できればラッキー、できなければまた刑を受けに戻らないといけないのですね。そして、戻らないと脱獄扱いにされ捕まると、そういう流れだと思います。

城隍や王爺には玉皇大帝に代わって地上を警備する「代天巡狩」という役割が与えられていて、悪霊、瘟神(疫病神)などを捕まえ、裁判する権限をもちます。

これは迪化街の城隍廟。中央で照らされているのが城隍で、左右に並ぶのがいわば司法官軍団。城隍の前にいる中壇元帥は本来それらの職能とは関係ないところ。ただ王爺信仰では中壇元帥も一応「李府千歳」という王爺の一柱になっています。手前の左右に立ち姿でいるのが、范将軍、謝将軍、韓将軍、盧将軍、そして仏教の牛頭馬頭をパクった牛将軍、馬将軍など実働部隊です。将軍たちが地上に残った好兄弟を捕縛し、城隍を裁判長とした司法団が裁きます。多分弁護士はいません。

「謝燈脚」は、すでに刑を執行されている途中の好兄弟がさらに罪を重ねることになるのを防ぐという意味合いを持ちます。

戦後ほとんど共産主義の洗礼を受けていない台湾人はよくも悪くもこうした見えない世界のことを大切にします。それが台湾人の優しさや親切心を生んでいるのではないかと思います。日本人もかつては「お天道様」に恥ずかしくないようにと、人が見ていないところでも悪いことを慎むというモラリティーがありました。台湾ではまだそういうのが生きているように思います。