台湾ではタトゥーは普通のことなので特に差別されないという話

古代日本人は顔などに入れ墨をしていました。それは縄文時代の土偶などからも伺われます。弥生時代になってからもその風習は受け継がれ『三国志』の魏書烏丸鮮卑東夷伝倭人条=いわゆる『魏志倭人伝』や『後漢書』東夷伝には倭人は文身つまり入れ墨をしているとの記述があります。ただ、そういうのは魔除けだの呪術だのといったものと考えられています。

ファッションとしての入れ墨がはやったのは江戸時代。江戸時代には町人の間で『水滸伝』が流行しました。といっても小説が読まれたというよりは、講談のようにおもしろいところを部分部分抜き出した絵物語や浮世絵などが流行ったのですね。そこに描かれる梁山泊の好漢たちは、有名な九紋龍史進を始め入れ墨を入れた姿で描かれていました。

そこで、職人やヤクザがこぞってその真似をして入れ墨をしだします。要するにコスプレです。コスプレの元祖が入れ墨というのもおもしろいですね。

入れ墨というとヤクザが入れるものみたいな思い込みがあるかもしれませんが、そのスジではなくてもカタギの職人さんなんかもわりと背負ってたりします。私は仕事柄、絵付きの背中の人は見慣れてます。

ただ、日本ではヤクザが背負うものというイメージが強すぎて入れ墨はマイナスイメージを持たれるようになってしまいました。これはヤクザが威嚇用のディスプレイとして見せびらかしたせいというのもあるでしょう。そのせいで入れ墨という文化はすっかり差別され、敬遠されるようになってしまいました。若い子がタトゥーを入れたものの、就職だの結婚だので消さなければならないというのもそういう差別があるためです。

台湾ではタトゥーは普通のファッション

しかし台湾では違います。台湾では、特に若い子の間でタトゥーを入れるのは普通のことです。さすがに背中にびっしりモンモン背負ってるなんていうのはめったに見ないし、背負ってるのはこれヤクザだろっていう強面のおっさんだったりもしますが、体の一部にタトゥーを入れてる子はどこにでもいます。おとなしそうなオタクっぽい女の子でも入れてます。

長安東路に中日飯包という弁当屋があって、そこで働いている若い兄ちゃんたちはだいたいタトゥーを入れてます。特に厨房で中心的な立場で腕を振るういかつい兄ちゃんは両腕にガッツリ入ってました。でもその子たちみんなぶっきらぼうだけど働き者です。タトゥー入れてる連中が働いてるからと差別されることもなく、味がよいのでその近辺では人気店です。両腕にタトゥーを入れてる兄ちゃんは、一番暑い鉄板の前で汗だくになりながらも休むことなく料理をつくります。見ていると動きによどみがなく、かなりの腕前。日本に彼にかなう料理人はどれだけいるのかなと思います。

コンビニに行っても店員がタトゥーを入れてるというのはよくあります。別に隠してはいないので普通に見えますよ。だってファッションで入れてるんだから隠すことないでしょ。

2016年に台湾の立法委員に当選した林昶佐氏は、当選後自らを独立派だと宣言した本土派の中でもかなりの硬派で人気があります。彼はブラックメタルのバンド閃靈のボーカルでもあり、腕にタトゥーを入れています。彼は日本の国会にあたる立法院での質疑のときに、そのタトゥーをわざわざ隠すことはしませんね。そもそも議員になる前にすでに有名人だったということもありますが、タトゥーをしているから立法委員にふさわしくないなどという声は有権者から出ることはありません。ちなみに林昶佐氏は李登輝先生の弟子でもあります。

西門町にはタトゥーショップが並んだ「西門町紋身街」という通りがあります。私もよく通りますけど特にアンタッチャブルな雰囲気はなく、中学生でも普通に歩いています。タトゥーショップの上にフィギュアショップがあったりとなかなかにカオスです。

だから日本では暑い夏の盛りでも見えないように隠している背中に立派なモンモン背負ってる人も、台湾なら隠すことなく歩けます。逆に特に珍しくもないので威嚇ディスプレイとしては通用しませんけど。

タトゥーなんてファッションなんだから騒ぎ立てるようなものでも差別するようなものでもないんですよ。ヤクザのモンモンだってコスプレだし、日本でコスプレなんてそんなに珍しいものじゃないでしょ?