中国は台湾の「本土」ではない

私が台湾が好きでよく行くなんてことを言うと、たまに中国のことを「中国本土」などという人がいます。特に年配の方に多いです。そういうとき私は、相手が年長者だろうとどんな立場の人であろうと、中国は台湾に対する「本土」ではありませんよと教えて差し上げます。

「本土」の意味を取り違えては台湾を理解することなどできない

「中国本土」というのは、香港に対する中国の呼称です。香港は一応一国二制度というタテマエのもと、中国の政体とは切り離されていることになっていますので、特別行政区である香港に対し、中国は「中国本土」です。また、サッチャーが下手打ったせいで返還しなくてもいいものを返還したため、香港は中国の領土に組み込まれていますから、沖縄の人が沖縄以外の日本を本土と呼ぶのと同様の意味でも中国は香港の本土ということになります。

一応解説しとくと、香港がイギリス領になったのは、アヘン戦争の講和条約としてイギリスと清国との間に締結された南京条約、アロー号事件の講和条約としてイギリスと清国の間に締結された北京条約に拠ります。また、イギリスは1989年に香港の北側にある「新界」を緩衝地帯として租借する展拓香港界址専条も締結しました。緩衝地帯の名目は香港の防衛です。ロシア南下の防衛戦として日本が朝鮮半島を併合したのと似たようなことと言えばわかりやすいでしょう。

さて、清国は南京条約で香港島、北京条約でいわゆる九龍地区を割譲しました。割譲というのは、領土を割って譲るということです。これは貸したわけではないので返す必要はありません。台湾も下関条約で日本に割譲されました。だから返す必要はありません。

寄り道の寄り道をします。よく誤解されているのが、戦後日本が台湾を中華民国に“返還”したということです。しかし、日本は台湾を返還などしていません。サンフランシスコ平和条約に記されているのは「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」です。よって領有権を放棄された台湾を蒋介石が占領したのは侵略にほかなりません。もっとも、蒋介石が台湾を占領したために、台湾の共産化が防がれ、沖縄も中国に奪われずにすんでいると考えることもできます。

話を戻すと、本来返還しなければならなかったのは99年の期限で租借していた新界だけでした。しかし、新界には香港の水源があります。ここを返したら香港は水の供給を断たれます。そこでサッチャーは英中会談で鄧小平に租借延長を申し入れます。が、鄧小平は新界とともに香港島、九龍地区を返還しなければ武力行使もやむなしなどと恫喝し、サッチャーはそれに負けて返す必要がなかった土地まで返還してしまったのです。

まあ、サッチャーが下手打ったというより鄧小平のほうがヤクザ的な恫喝に長けていたとも言えるでしょう。ともかく香港は中国の領土となってしまったので、香港から見た中華人民共和国は「本土」と言えます。

しかし、台湾は1秒たりとも中華人民共和国の領土になったことはありません。だから中国は台湾にとっての「本土」ではありえないのです。

台湾で「本土」といったら台湾そのものを指します。台湾主体主義の政治家は「本土派」と呼ばれます。そこを取り違えて「中国本土」などという勘違いをしていると、本土派の意味がまるで逆になってしまいます。台湾の本土は台湾です。中国ではありません。