日本人が作り出した「蓬莱米」の子孫・池上米がうまいのはあたりまえではないか

いわゆるキュレーションサイトで素人ライターが書いたものは、台湾について間違ったことを書いていても、ソース出して名指ししてまでは批判するつもりはありません。が、フォーブスは世界的なメディアだし、そこにオフィシャルコラムニストとして出稿している人なら名指しで批判してもいいよね。

今回いろいろ言わせてもらうのは、フォーブスジャパンに載っていた「駅弁が根付く台湾で気づいた日本の「白ごはん」の魅力」という記事。書いたのはお米ライターと称する柏木智帆氏。柏木氏はこの記事で「日本と海外のお米事情を取材している」としています。そのわりにはお粗末なのでいろいろ言わせてもらいます。

台湾でも「白ごはん」は特別なものではない

まず柏木氏は、台湾で売られている駅弁が全てご飯の上におかずが乗せられているのを見て

やはり、日本のようにごはんを「白ごはん」として食べる文化は世界的にめずらしいのだろう。東南アジアでは、ごはんを主食としている国であっても、ごはんにおかずを“ぶっかける”スタイルが主流だ。あるいは、白ごはんであっても主食という概念ではなく添え物になっている。

と決めつけます。確かに台湾では、駅弁に限らず弁当というとご飯の上におかずが乗せられているものが主流です。しかしこれは、日本の丼ものだけ見た外国人が「日本人はご飯の上になんでも乗せて食べる」と言うようなもの。的外れにも程があります。

台湾でも家庭で食べる時は白ごはんとおかずという組み合わせで食べるし。自助餐でも好きなおかずを自分で選び、白ごはんと食べるというスタイルです。また、食堂でもレストランでも、料理を注文した上で頼めば白ごはんも出してくれます。台湾では白ごはんのことを「白飯」といいます。そういう概念がない国なら、それを表す言葉もないはずです。台湾では白ごはんとおかずを別々に食べることはまったく珍しいことではありません。

そんなことも知らずに日本の「白ごはん」を特別のことのようにして「魅力」とか言っちゃうのはどうなんでしょうね?ちなみに中国でも白ごはんとおかずの組み合わせは普通です。

実際行ったことがないのであくまで伝聞とかテレビで見た程度の知識で書くと、ベトナムやインドネシアでも同様。インドネシアのケンタッキーには白ごはんとチキンのセットがあるそうです。と書くと日本の米のほうがうまいとか言い出すのも出てくるかもしれないけど、そういう食文化があるかどうかの話にうまいかどうかは関係ありません。

柏木氏はまた、

香港に米を輸出している山形県の農家は「現地の日本料理店のコース料理の締めのごはんは、炊き込みごはんが主流」と言っていた。

とも書いていますが、香港と台湾の食文化は重なるところはあるけれど大部分違います。香港を例に台湾を語るのは大雑把すぎるでしょう。

もちろんこの記事の全てがダメというわけではありません。台湾のブランド米「池上米」を実際に購入して炊いてみたという柏木氏は

日本人がごはんを単品で楽しめるのは、「お米がおいしいからだ」と言う日本人は多い。しかし、少なくとも私が炊飯して食べた池上米は、冷めた白ごはんでも十分おいしく、日本人が抱きがちな「日本米はおいしい」「外国米はおいしくない」というのはステレオタイプだと身を以て感じた。

と書いています。この点は同意です。ただ、「日本と海外のお米事情を取材している」わりには非常にお粗末です。

池上米を日本人が食べてうまいのは、その歴史を見れば当然のことです。

池上米は、日本時代の台湾で開発された「蓬莱米」を祖先に持ちます。

日本が統治するまでの台湾で育てられていたのは長粒米です。今でも台湾では長粒米を「在来米」と呼び、新竹名物の米粉(ビーフン)は在来米を原料に作られます。

台湾を領有した日本政府は、台湾で米の栽培を行い、本土の食料をまかなう計画を立てました。そこで、農学者の磯永吉博士の研究のもと、末永仁技手がジャポニカ米と在来米をかけ合わせ、台湾での栽培に適し、かつ日本人の口に合う米の開発に取り組みました。

そこで行われたのは1000種に及ぶ米の交配です。そこから生み出されたのは214種類。10年に及ぶ研究によって、やっとできあがったのが蓬莱米で、栽培された蓬莱米は内地で販売されるまでになりました。敗戦した日本の統治から離れた台湾では、自分たちの食料として蓬莱米を育て続けます。

戦後台湾を占領した蒋介石は、日本的な名残を排除しつつも、日本が残したインフラなどはちゃっかり利用し、必要な技師などは台湾に留め置きました。磯博士も蒋介石政権によって遺留された一人です。磯博士、末永技手は今でも台湾で顕彰されています。

池上米は、そんな二人の日本人の努力から生み出された蓬莱米の子孫です。こんなこと「歴史秘話」でもなんでもありません。有名な話です。お米ライターを名乗るなら、この程度のこと調べて記事を書くべきでしょう。

日本人が生み出した米の子孫を、今でも台湾人が大切に育て、食べている。そこに日台交流の重みがあるのではないでしょうか?