台南の国立歴史博物館で日本時代に始まる貸本屋の歴史をたどる特別展開催中

台湾に初めて行ったのは高校生だった1985年か1986年。もうはるか昔で記憶が定かではありません。当時はまだ一回だけ使える使い捨てパスポート「一次旅券」というものがあって、それを取得して行きました。いっしょに行った人と夜に外を歩いたら静まり返っていて、なんて静かな国なんだろうと思ったものです。実はその当時はまだ戒厳令が施行されていて、夜には外出禁止だったことを知ったのはずいぶん後になってからのことでした。蒋経国時代の最晩期で、多少ゆるくなっていたとはいえよく見つかって拘束されなかったものです。

その当時『ファンロード』というアニメ雑誌というかアニメ系ネタ雑誌ではよく香港や台湾が特集されていました。当時発売された『香港・台湾ゲゲボガイド』は今ではけっこう貴重なんじゃないかと思います。そこでよく取り上げられていたのが、台湾の海賊版漫画。

台湾はWTOに加盟するために国内の著作権法を改正するまでは、国際的な著作権保護の協定などには参加しておらず、日本の漫画などをコピーした海賊版漫画が販売されていました。『ファンロード』では、そうした海賊版で、日本の漫画が中国語になっている珍しさや、当時の台湾の規制からヌードシーンに墨が塗られていることなどをネタにして紹介していたわけです。

私は台湾に行くからにはその海賊版漫画がどうしてもほしかった。でも、当時は光華商場の存在なんて知りませんでしたから、どこで売っているのかわからず、いろんなお店を探し回りました。そして、一緒に行った腐女子の元祖みたいなお姉さんと偶然海賊版漫画がたくさん並んでいるお店を発見。喜び勇んでたくさん漫画を持ってレジに行ったところ、告げられたのがこれはレンタルであるということ。つまり、貸本屋さんだったのですね。

それでも店のご主人は、その中から数冊の漫画を売ってくれました。それは今でも大切に持っています。

ななこSOS、Dr.スランプ、そして桑田次郎版ウルトラセブン。

蒋経国がまだ存命中だったこの時代、日本の出版物はご禁制でした。だからキャラの名前はみんな中国名にされ、カタカナの効果音の部分も全部漢字になっています。もちろん台湾人はそれでもこれが日本の漫画であることを分かって読んでいたわけです。蒋経国が死んでから、台湾の出版社が日本と正式ライセンスを結んで翻訳版を出すまでのわずかな間にも海賊版漫画は作られつづけます。しかしそのころにはもうゆるくなって、キャラの名前はそのままだし、カタカナも平気でそのままになっていました。

つまりガチガチに日本の要素を消してある(漫画そのものが日本の要素なのだけれど)海賊版はなかなかに珍しいのです。海賊版はもちろん違法行為です。ただ、中華民国占領後世代にも親日派を作ったという功績があるのも確かです。哈日杏子さんなどはその典型ですね。

台南で貸本屋の歴史展示

という今では珍しい台湾の海賊版漫画自慢は枕で、本題は台南の国立台湾歴史博物館で、日本時代から現在に至るまでの貸本文化の特別展が開催されているということ。おそらく海賊版漫画なんかにも触れられているんじゃないかと思います。歴史博物館で、貸本を台湾の歴史ととらえた展示が行われるのは興味深いですね。台南に行く人は寄ってみるといいのではないでしょうか?

と思って調べたら国立台湾歴史博物館の日本語版公式サイトがありました。ここクッソ行きにくい場所にありますね。寄るというより、ここを目的として予定組まないといけないレベル。でも行って損はないはず。たぶん…

いわゆる昔ながらの貸本屋が姿を消したのは日本でも台湾でも同じこと。しかし、レンタルショップによる新たな形での貸本が出てきたのもまた同様です。台湾には漫画喫茶とレンタルショップを合わせたようなお店がたくさんあって、それはツタヤなどが漫画レンタルを始めるよりずっと早くから出てきた業態です。たまに古くなった雑誌が店頭で安く売られています。