今どき「本省人VS外省人」という単純な構図で台湾を論じる人間はいない

小林よしのりが『台湾論』を上梓したのは2000年のことで、今から18年も前になります。『台湾論』において本省人と外省人のいわゆる「省籍対立」というものがとりあげられました。で、18年も経った今になっても『台湾論』で得た知識から進歩せず、いまだに本省人、外省人という見方で台湾を語ろうとする連中がいるんで一応書いておきます。

『台湾論』が出たころは、確かに「省籍対立」というのはあったわけです。そもそも台湾における省籍の区別とは何かというと、「台湾省」に籍を置く人は「本省人」と呼ばれ、台湾省以外に籍を置く人が「外省人」と呼ばれているというもの。

まず「台湾省」というのは、蒋介石が台湾を接収した後に作られた省です。つまり中国に属する台湾ということで作られた区分で、終戦までに台湾に住んでいた台湾人は台湾省籍とされます(ただし金門島は福建省に組み入れられたために、戦前から金門島に住んでいた人も福建省籍)。

これは蒋介石が国共内戦に敗れて台湾に逃れた後も続きます。要するにこれは中華民国政府が台湾を含めた中国全土を支配しているというフィクションに立って維持された制度です。

台湾省なるもの、そして金門島の福建省への所属はそれぞれ1997年に凍結され、現在は有名無実になっています。

日本語世代の台湾の古老の中には「本省人、外省人というのは国民党が決めたものだ。私は“本省人”などではなく台湾人だ」とおっしゃる方もいます。つまり、台湾人に向かって「あなたは本省人です」と言うのは、蒋氏政権の台湾占領を肯定的にとらえた失礼かつ侮蔑的な行為になります。

そもそも台湾の現実は本省人VS外省人などという単純な構造ではありません。母語が台湾語の生粋の台湾人でも、国民党の洗脳教育を受けた世代の中には自らを中国人と認識する人もいます。逆に外省籍でも台湾独立を支持している人もいます。

そもそも本省人VS外省人という単純な対立なら、選挙戦において民進党や、より台湾主義の台湾団結連盟が苦戦するということはありえなかったはずなのです。

台湾には外省系、ホーロー系、客家系、原住民系の対立や連携といったより複雑にからみあった問題がありました。

だからこそ李登輝元総統は、省籍うんぬんは関係なく台湾に住む人はみんな台湾人であるという「新台湾人」という概念を打ち出したわけです。

世代が進むと、そもそも中国は外国であると認識する若い世代も増えてきました。省籍を超えた婚姻も普通のことです。そして台湾アイデンティティを持つ台湾人の増加は省籍など関係ありません。2016年の蔡英文の勝利もそれが影響しているし、2014年の「ひまわり学生運動」を主導した黄国昌や、台湾独立運動・台湾正名運動にかかわってきたミュージシャンの林昶佐が建てた政党「時代力量」が新党にもかかわらず5人の当選者を出したのもその表れです。

今で「本省人が」「外省人が」などという観点で台湾を論じる人はまずいません。いるとすればせいぜい『台湾論』から時代が止まっているネトウヨのたぐいでしょう。